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混迷のイタリア政局 [アメリカ・ヨーロッパ・ロシア関係]

27日までに連立枠組み合意を、伊大統領が各党に求める(AFP)

イタリア政局が混迷を極めている。極右政党「同盟」反緊縮を掲げる「五つ星運動」の連立政権が事実上崩壊。ジュゼッペ・コンテ首相が辞意を表明した。セルジョ・マッタレッラ大統領は各党に新たな連立政権の樹立を求めているが、失敗した場合には解散総選挙となる可能性が高い。

イタリア政局の説明をする前に、イタリア議会について触れておきたい。イタリアは上院(共和国元老院)と下院(代議院)の2院制を採用している。日本やイギリスでは下院に優越があり、内閣不信任決議案も下院のみが提出できる。一方、イタリアは両院の権限は対等なので、両院とも内閣不信任決議案を提出することができる。逆に、大統領は上下両院とも解散することができる。選挙制度は州によって少しずつ異なるが、比例代表制が主軸で一部小選挙区制度がはいるいささかややこしいシステムとなっている。比例代表制が主軸のため少数政党が林立しやすいため、中道右派系の政党で連合を組んで政権を運営したり、中道左派系の政党で連合を組んだりと多党による連立政権がほとんどだ。


イタリアはEU加盟国のなかでも財政的に厳しい国の1つだ。そのため、EU各国から緊縮財政と債務圧縮を求められている。こうしたなかで緊縮財政と反EUで支持を伸ばしてきたのが「五つ星運動」だ。イタリアの人気コメディアンであるベッペ・グリッロ氏が2009年に立ち上げた政党だ。昨年3月4日に実施された総選挙(上下両院とも選挙になる)では、貧しい南部を中心に得票率を伸ばし、上院で112議席、下院で229議席を獲得し、第1党になるまで躍進した。


もう1つ支持を伸ばしていたのが極右政党「同盟」。イタリア北部の工業地帯を支持基盤とする地域政党がそのスタートで、かつては「北部同盟」と名乗っていた。極右政党と言われているが、かつては北部の独立を目指していた時期もあり、国家や民族を重視する極右の考え方とは少し違うようにも感じる。ただ、最近では中東や北アフリカからの移民・難民問題を受けて、反移民・反EUの旗色を鮮明にしていたので、近年右傾化したという表現もできる。昨年3月4日の総選挙では、上院で57議席、下院で124議席を獲得し、第2党となった。


その後、反緊縮で左派的な政党である五つ星運動と同名の間で連立協議が実施され、首相に推薦されたのがフィレンツェ大学法学教授のジュゼッペ・コンテ氏だった。余談だが、イタリアでは多党間での連立となるため、学者など政治家ではない人が首相に推薦されるケースが少なくない。


こうして昨年6月1日から発足したコンテ政権だったが、左派的な五つ星運動と右派的な同盟の連立政権でしかも支持基盤が真逆な地域なだけに、内外政策で対立が相次いだ。また、直近の政党別支持率をみても同盟が最も高くなっており、同盟党首でコンテ政権の副首相兼内相を務めていたマッテオ・サルビーニ氏は移民・難民に対する厳しい政策もあって国民的な支持も伸びていた。逆に、五つ星運動は昨年の選挙で公約としていた政策の導入が進まず、支持が伸び悩んでいた。

サルビーニ氏はこうした状況を背景に、五つ星運動を排除しての政権構築を模索。今月20日にコンテ政権に対して内閣不信任決議案の提出に向けた動きを見せたため、コンテ首相が辞意を表明。現在に至っている。つまり、サルビーニ氏が政権奪取を狙って仕掛けた政局というわけだ。

サルビーニ氏は連立の組み換えによる同盟主導の政権構築か、それが難しければ解散総選挙で勝利しての政権樹立を目指している。一方、五つ星運動も左派連合との交渉で連立組み換えによる政権確立を狙っている。ただ、仮に五つ星運動主導の左派政権が構築できたとしても、議会第一党の同盟が抵抗すれば、政局の不安定さが続きかねない。状況は非常に流動的だ。
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