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ドイツ政局の混迷~チューリンゲン州の混乱~ [アメリカ・ヨーロッパ・ロシア関係]

メルケル首相「後継者」が辞意表明 独与党の将来に暗雲(AFP)

10日にキリスト教民主同盟(CDU)のクランプカレンバウアー党首が辞意を表明しました。2018年にメルケル首相がバイエルン州やヘッセン州での州議会選挙で政権与党が敗北したことを受けて2021年の任期満了での首相退任とCDU党首の辞任を発表。クランプカレンバウアー氏は同年12月の党首選挙で当選し、党首となり、昨年7月からは国防相に就任していました。クランプカレンバウアー氏はポスト・メルケル最有力候補となる一方、昨年の欧州議会議員選でもCDUが惨敗するなど、支持は伸び悩んでいました。


そのクランプカレンバウアー氏にトドメを刺したのが、チューリンゲン州の混乱でした。チューリンゲン州は旧東ドイツの地域で、人口は約220万人。ドイツの中でも比較的小さな州です。昨年10月、このチューリンゲン州で州議会議員選挙がありました。結果は以下の通りとなりました。

定数90 ()内は選挙前からの増減
左派党29(+1)
ドイツのための選択肢(AfD)22(+14)
キリスト教民主同盟(CDU)21(-12)
ドイツ社会民主党(SPD)8(-5)
緑の党5(±0)
自由民主党5(初)


チューリンゲン州はもともと左派党の勢力が強い地域で、州首相も左派党のボド・ラメロウ氏でした。14年州議会選以降、左派党、社会民主党、緑の党による3党連立政権で運営されていました。総選挙の結果を見ると、左派党は第一党を維持した一方、ドイツのための選択肢が躍進。一方、CDUは議席を大幅に減らし、大敗北となりました。

しかし、今月5日の州首相選挙で自由民主党のトマス・ケメリヒ氏がCDUとAfDの支持を受け、わずか1票差でラメロウ氏に勝利しました。これがドイツ政局を一気に混乱へと陥れることになります。


と、いうのも極右勢力とされる政党の支持を受けて州首相が誕生したのは戦後ドイツではこれが初めてでした。また、CDUは国政・地方問わず極右・極左勢力との協力を禁止しています。つまり、チューリンゲン州のCDUは左派党政権を倒すために、中央の規則を無視してAfDと手を組んだわけです。


これに対してメルケル首相はこの投票結果を激しく批判しました。現在のメルケル政権はCDUとキリスト教社会同盟(CSU)、それにSPDとの大連立政権です。地方政治といえどAfDと手を組んだことを容認すれば政権が即刻崩壊しかねない事態です。また、国政政党としての自由民主党もチューリンゲン州での行動には批判的な態度を示します。このため、翌6日にトマス・ケメリヒ氏は州首相を辞任し、州議会の解散総選挙を求めると発表しました。州首相就任からわずか1日での辞任でした。


このチューリンゲン州での混乱は国政にも影響を与える結果となり、クランプカレンバウアー氏の党首としての指導力が疑問視されることになりました。このため、今回の辞意表明につながってしまいました。ただ、クランプカレンバウアー氏は今年12月の党大会で正式に党首を選ぶ方針を示していますが、これに対して「遅すぎる」との批判が党内から上がっており、一体いつCDUの次期党首が選ばれるのかは不透明な情勢です。


さらに、この事態はメルケル政権の将来にも不安を与えています。メルケル首相としては、クランプカレンバウアー氏をポスト・メルケルに置きながら、2021年の任期満了まで首相として在任する算段でした。しかし、クランプカレンバウアー氏の辞任、そしてチューリンゲン州での混乱によるSPDとの関係悪化でその算段が崩れる可能性も出ています。メルケル首相は昨年、ウクライナのゼレンスキー大統領を迎える式典で発作を起こした姿が報道され、健康不安も指摘されています。ドイツの政局は一気に不安定化するかもしれません。
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