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ビック3つなぎ救済法案、上院でまとまらず [アメリカ・ヨーロッパ・ロシア関係]

GM(ゼネラル・モータース)、フォード、クライスラーというアメリカの自動車大手3社は今、重大な経営危機に陥っています。先日の世界金融危機発生以来、資金の貸し手が見当たらず株価も下がりっぱなしでした。

そもそも、3社が経営危機に陥った背景として、1970年代に起こった2度のオイルショックで日本やヨーロッパの自動車会社はハイブリット車や低燃費車などのエコカーの開発を進めてきました。最近ではバイオエタノール車や電気自動車、燃料電池車など新しいエネルギーに対応した自動車を開発してきました。

しかし、ビック3は連邦政府からの補助金に甘え、ずっと燃費の悪い4WDを生産してきました。そのため、アメリカでもエコカーが勢力を伸ばし始めると、徐々に販売台数を落としていきます。


彼らは今回の経営危機を合衆国政府からの公的資金の注入で乗り切ろうと考えます。しかし、先日開かれた公聴会でビック3のCEO(最高経営責任者)たちは厳しい批判にさらされます。ワシントンまでプライベート・ジェット機で来たこともそうですが、何より彼らの発言が「お願いする」というより「我々3社が倒産すれば数百万人の失業者が発生するから、とっとと支援しろ!」という態度での発言だったのです。

これに対し、共和党を中心に「なんで経営者の責任を国が負わなくてはならないんだ」という批判が根強くありました。また、金融機関への公的資金の注入はそれ自体が民間企業への融資を刺激するために行われるものであるのに対し、民間企業に直接注入となれば、俺も私もと次々要請してくる危険があるというのも反対理由の1つです。共和党内からは破産法第11条(日本で言う民事再生法)を適用すべき!という意見まで出てきています。

一方民主党は支持団体の1つに、アメリカ最大の労働組合である全米自動車労働組合(United Auto Worker,通称: UAW)を持っていることもあり、なんとか救済できないかと必死です。UAWも新聞に「我々は銀行員ではありません。」と広告を出して、ビック3救済に対して米国民の理解を得ようと必死です。


米国議会というのは日本やイギリスの議会と異なり、共和党や民主党といった政党が賛成・反対を決めたところで法案が成立するとは限りません。加えて上下両院の議院とも、有権者の意見を常に気にしています。9月30日の金融安定化法案が否決されたのも、そんなアメリカだったからこそ、です。

今回、ビック3がとりあえず年を越すのに必要な150億ドルを融資し、それ以降の本格的な融資はオバマ氏が大統領に就任してから決めてもらおうという方向で、ビック3つなぎ救済法案が提出され、下院を無事通過したわけですが、上院での話し合いがまとまらず、廃案という方向になりそうなのです。先日の金融安定化法案で大統領府が自由に投入先を決めていいとされた予算を使うという案も出ましたが、これはビック3救済に反対しているブッシュ大統領がサインしないだろうと考えられ、実現しませんでした。


もしも、このままつなぎ救済法案が通らなければ、ビック3で年明け早々にも資金不足から破産法第11条の適用を申請し、倒産となる企業が出かねません。そうなれば1社だけでも300万人近い失業者が発生するといわれています。しかし、だからといって安易に支援したくない側の言い分もわかります。つまり、経営者の責任を国が被るという前例を作れば「俺たちは大企業だからいざってなれば国に泣きつけばいいさ。」というモラルハザードを生みかねないのです。さらに、世界金融危機でさらに弱った合衆国の財政基盤がこれを支えきれるとは思えません。

もしも、ビック3が全て破産すればアメリカで1000万人近い失業者が生まれることとなります。そうなれば、この世界金融危機は単なる「金融危機」ではなく「第二の世界恐慌」になるでしょう。そうなったとき、今度は経済だけではなく、国際情勢へも大きな影響を与えていくことになるでしょう。

タグ:経済
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tonta

今後の流れを見ていくしかなさそうですね(^-^;
by tonta (2008-12-13 20:34) 

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