SSブログ

コソボ独立とロシアの動き [アメリカ・ヨーロッパ・ロシア関係]

国連が暫定統治するセルビア・コソボ自治州の独立問題で、セルビアと自治州間の協議の仲介役を務めた米国、ロシア、欧州連合(EU)は7日、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長に「協議は合意に達しなかった」と確認する報告書を提出した。

 事務総長が定めた10日の交渉期限までに歩み寄りがなかったことで、自治州が2008年1月にも一方的に独立宣言を行うのは確実となった。国連安全保障理事会は19日に協議する予定だが、今年7月にはロシアの反対により、独立を事実上認める決議案の採決を断念するなど、安保理はこの問題での対応能力をほぼ失っている。

 報告書は、双方が4か月におよんだ協議で「主権という根本的問題で譲歩しようとしなかった」とし、独立を主張する自治州と、これを拒否するセルビア側の溝が埋まらなかったことを明らかにした。ただ、双方とも、地域を不安定化させる行動や暴力の自制は約束したとしている。(読売新聞より引用)

かつて90年代最悪といわれるコソボ紛争の原因の1つとなったコソボ独立問題がいよいよ佳境にはいっています。

ここで少しユーゴスラビア紛争についても触れておきましょう。1980年に社会主義国家であったユーゴスラビア連邦人民共和国の大統領ティトーが死去すると、急速に民族対立が深まっていきました。

元々バルカン半島自体が様々な宗教・民族を抱えており、第一次世界大戦前は『世界の火薬庫』と呼ばれ、実際に第一次世界大戦の引き金もこのバルカン半島で引かれました。特にユーゴスラビアは「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、1つの国家」という表現があるくらい複雑に絡み合った国家でした。その国の独裁者が死んだことで対立が先鋭化してしまったのです。

そして1991年、モンテネグロ人の住むスロベニアとクロアチア人の多く住むクロアチアが連邦からの独立を宣言。これに対し、連邦の中核をなしていたセルビア(セルビア人)が攻撃を仕掛け、最初のユーゴスラビア紛争が始まります。さらに1992年にはいると、ボスニア・ヘルツェゴビナが独立を宣言。これに対してもセルビア軍は攻撃を仕掛け内戦がさらに拡大。1994年にはボスニア内のセルビア人武装勢力に対してNATO軍が空爆を仕掛けています。この2つの内戦は95年に終結したのです。

そしてコソボ紛争ですが、1989年にセルビア議会はアルバニア人の多く住むコソボ自治州の自治権を剥奪しました。これに対しアルバニア人は1990年に『コソボ民主同盟』を結成し、自治権の奪還を目指しますが、当時のセルビア大統領ミロシェビッチは警察を使ってこの運動を弾圧。そのため、前記の内戦で混乱している中アルバニア人勢力は『コソボ解放軍』を結成します。このコソボ解放軍はコソボ内のセルビア系住民の拉致・殺害などのテロ行為に及びました。これに対し、1998年、セルビア軍は大規模なコソボ解放軍掃討作戦を開始。この中で民族浄化ともいえるアルバニア人やムスリム人(イスラム教徒)の虐殺が行われることになります。これに対しNATOは内戦終結を促すためにセルビアの軍事施設の空爆を開始。ミロシェビッチ大統領はこれに反発しNATOとセルビアの戦争に発展してしまいます。空爆の効果で内戦は終結。2000年にミロシェビッチ大統領は国際刑事裁判所に『人道に対する罪』で告発されることとなります。(06年に病死)

で、今回国連が暫定統治しているコソボが来年1月にも独立を宣言しそうで、それにセルビアが反発しているわけです。問題は今年7月のコソボ独立の承認決議案でこれを拒否したロシアです。

セルビアもコソボも現在のロシアを考えれば戦略的要地とは考えにくいです。黒海の海軍力を地中海に出しやすくしたいのならブルガリアやルーマニア、トルコ、ギリシャなどの国に圧力なり何なりをかけるはずですから。

いずれにしても、ロシアは間違いなくバルカン半島での影響力拡大を考えているのでしょう。日本とはほとんど関わらない地域だとはいえ、ロシアは日本とも大きな関係を持つ国ですから、注視すべき問題だと思います。

これは余談になるのですが、1904年の日露戦争のとき、当時ロシアと関係の深かったセルビアとモンテネグロ(現セルビア・モンテネグロ)両国は日本に宣戦布告したのですが、結局両国は日本と戦うには遠すぎたため何もせぬまま日本とロシアは講和してしまいました。ですが、このときセルビアとモンテネグロをポーツマス会議に呼ぶのを日露、仲介役の米も忘れていたためポーツマス条約にセルビアとモンテネグロは署名していません。このため、日本とセルビア・モンテネグロは国際法上まだ戦争状態にあることになりますww 何か形式的でもいいですから講和条約作ったらどうでしょうかね?w


nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:ニュース

nice! 1

コメント 2

toot

はじめまして。コソボ、セルビア関係のブログを探してたどり着きました。

以下は身勝手なお願いです。
民族浄化という言葉が本文中に使われていますが、主にNATOによる空爆後コソボを占領するアルバニア系の人間から、コソボに住む少数のセルビア系人民への拉致、殺害という民族浄化が行われたことも追記していただけないでしょうか。

セルビアだけが悪者ではないんです。
by toot (2007-12-10 01:14) 

そうてん

>toot様
ご指摘ありがとうございました。
調べた結果コソボ解放軍によるセルビア系住民へのテロ行為があったことは事実だったようなので修正させていただきました。

ご指摘に感謝するとともに、調査不足を謝罪させていただきます。
by そうてん (2007-12-10 02:02) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。