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何故、GMの車は破産してしまったのか? [アメリカ・ヨーロッパ・ロシア関係]

6月1日、GM(ゼネラル・モータース)は連邦破産法第11条(日本の民事再生法にあたる)の適用を申請し、法的整理に入りました。事実上の破産です。製造業では、世界最大規模の破産となりました。GMは1908年にミシガン州で創業された自動車会社で、1920年代にはフォードを追い抜き、全米No.1の自動車会社となりました。それが何故、今回破産することになってしまったのでしょうか。


そのターニングポイントとなったのは、1970年代でした。1970年代、2度のオイルショックにおいて日本やヨーロッパの自動車会社は超原油高にあくせくしました。一方アメリカでは米国政府による補助金のおかげもあって、米国の自動車会社はそれまでどおり、アメリカでは人気のあった大型車を製造し続けました。

その間、特に日本が自動車の低燃費化と低コスト化を進めていきます。結果、1980年代には米国で日本から輸出された自動車が貿易摩擦を起こすほどに日本車が販売されていたのです。このとき、米国の自動車業界や全米自動車労働組合(UAW,米国で最大の労働者組合)は自分たちで売れる車を開発する方向ではなく、米国政府に圧力をかけてもらう未知を選択したのです。結果、日本の自動車業界は対米自動車輸出自主規制を行うことになります。

しかし、当たり前のことかもしれませんが売れるものは売れるのです。それでもGMは従来の大型車を販売し続け、低燃費車の開発といった研究努力を怠りました。一方の日本では、みなさんご存じのとおり各社が競って低燃費車を出し、トヨタに至ってはガソリンと電気を交互に使うハイブリット車を売り出していきます。


このようにして、徐々に売り上げが減少していく中で負担になっていったのは業績のよかった頃に保障したGM従業員用の医療保険や年金制度です。アメリカでは国家全体としての社会保険制度や年金制度がありません。ですから、大企業の中にはこのような制度を持っている企業がたくさんあります。業績の良かったころはよいのですが、少しずつ悪化している段階になるとこれは大きな負担になっていきます。ですが、UAWがそれを認めるはずもなく、その負担は年々巨大化していきます。


さらに昨年のガソリン価格の高騰とリーマン・ショックによって販売台数が極端に減少。2008年上半期には販売台数世界一をトヨタに奪われるという事態にまで発展。ここに巨額の医療・年金保険の負担がかかるわけですから事実上の債務超過になります。その額は2005年105億6700万ドル、2006年19億7800万ドル、2007年387億3200万ドルとなっています。


さて、このあとGMなど大手自動車会社は米国政府にまたも助けを求めるわけですが、去年10月頃と言えば大統領選近辺で、しかも「政府が大企業ばかり助けるのはどうなんだ!?」という声が国民から上がっていた時期でもあり、自動車業界を助けるための法案も出されていますが、最終的に廃案になっています。その後、追加の支援を受けるために必要な経営再建案が会社側とGMの債券保有者との間でまとまらず、今回の事態に至ったというわけです。


まとめるなら
①アメリカ合衆国の力に頼りすぎた。
②自ら売れる物を開発・販売しようとする努力を怠った。
③後々のことを考えずに巨額の医療・年金保険を約束してしまった。
ですかね。

『世界で1番の社会主義国家』と言われた日本でトヨタなどの自動車会社が自助努力で世界No.1になっていった一方で、『世界で1番の資本主義国家』アメリカの自動車会社が政府に頼りすぎて努力を怠ったために破産することになってしまったというのにはある種の皮肉を感じます。


さて、今後GMは事実上国有化され、優良部門のみを集めた新GMを作るという形で経営再建が進められることになります。このGM再建がどうなるかによっては、オバマ政権の足元を崩すような事態になることもありえるので、今後の動きは要注目だと思います。
タグ:GM アメリカ
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